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第151回国会 衆議院本会議34号 2001/5/30
○原陽子君   社会民主党の原陽子です。
 私は、社会民主党・市民連合を代表し、政府提出の林業基本法の一部を改正する法律案に対する質問を行います。(拍手)
 私は、本日、この法案について質問できることを非常にうれしく思っています。なぜなら、実は私の実家は、木を育てる仕事をしています。植林するためのヒノキとか松とか杉の苗木を育てる専業農家に、私は生まれ、育ちました。そうした木への思いを込めて質問をさせていただきたいと思います。(拍手)
 今日、日本の森林・林業は、大きな岐路に立たされています。その原因は、林業の担い手が減少しているということに尽きます。国による林業政策の失敗、つまり、外材依存による国産材の不振と林業への支援不足であるということは、林業の現場から、長い間、指摘されてきました。このような状態が今後も続けば、森林そのものが衰退すると危惧されています。
 そして、さらなる危惧は、この事態に対し、私たちに余りにも危機感がないことではないでしょうか。
 森林が人間の営みと切っても切れない関係にあることは言うまでもありません。人類が森林とともに歴史を刻んできたことは事実であり、森林の破壊や消滅が古代文明の滅亡や幾多の国家の消滅と直結していたことも、今日では明らかになっています。
 森林を消滅させてきたのは、ほかでもなく人類であり、その子孫である私たち現代人は、森林の育成に余り関心を抱かず、加速度的に森林を破壊し続けてきました。一方で、森林の破壊による環境への影響が地球的規模で問題となり、森林の大切さ、重要さが叫ばれてきたゆえんだと思います。
 さて、この林業基本法の一部を改正する法律案は、おくればせながらも、森林・林業の政策を、木材生産を主体にしたものから、森林の有する多面的機能の持続的発揮を図る政策に重点を移すことを目的としています。その中で、林業は、「森林の有する多面的機能の発揮に重要な役割を果たしている」とされ、「健全な発展が図られなければならない。」ものとされています。二十一世紀は環境の世紀と言われますが、多様な生物や豊かな水をはぐくむ森林の役割は大きく、国民の森林・林業に対する期待の多くも、この点にあります。
 しかし、日本の森林の実態は、森林そのものの育成が思うようにいかず、森林の持つ機能が十分に発揮できるような状態ではありません。これは、山林に足を踏み込めば明らかで、農林水産大臣も御承知のことと思います。
 市場原理にゆだねた林業生産活動から、森林の持つ多面的機能という公共性に着目した政策へ転換する以上、ある程度の国の支援のもとで、安定した森林経営が行われることが前提にならなければならないと思います。財源的な裏打ちなしに環境面の配慮まで強いるのは、森林経営・労働者に今以上の負担やリスクが加わることになるからです。
 私は、政府の新たな理念と方向性には同意します。しかし、残念ながら、その理念の実現方法についての具体性は見えてきておりません。農林水産大臣は、持続的林業経営についての具体的方策について、どのようにお考えになっておられるのでしょうか、また、そのための財源についてはどのようにお考えでしょうか、お尋ねをいたします。
 私は、これまで山林や山村に配分されてきた公共事業費のあり方を見直してはどうかと考えます。つまり、これまで、政府の方でも、むだである、あるいは環境破壊であると批判を浴びて、農道事業や一部の大規模林道の事業を中止したように、コンクリートとかアスファルトや無数の治山ダムで山を破壊するのではなく、本当に森林の育成やその担い手を育てることに役立つよう、税金が次の世代に生かされるよう、予算の重点を移すといったあり方が考えられると思いますが、財務大臣並びに農林水産大臣の御見解を伺います。(拍手)
 次に、担い手の問題について、もう少し詳しく質問をいたします。
 担い手を育てるということは、森林を育てるということと一体のものです。この点についても、この法案では、一定の方向性は示されていますが、担い手がどのように確保されるのかは明確ではありません。現場で言われている切実な声としては、林業をやりたいという若者はいるのだが、その受け皿がない、危険な上に収入が安定しない、後を継いでほしいとはなかなか言えないといったことで後継者が育たないというものです。
 この点を解決するには、収入を含め、労働環境の改善を図るための施策が必要ではないでしょうか。法案には、「教育、研究及び普及の事業の充実その他必要な施策を講ずる」とありますが、果たして、これで担い手は本当に育つのでしょうか。具体策について、農林水産大臣の明確な御答弁をお願いします。
 私は、林業をやることに対しての、直接支払いや所得補償などの思い切った政策の導入が必要だと考えていますが、このことについても、大臣のお考えをお聞かせください。
 次に、森林・林業基本計画について伺います。
 政府は、これまでの林業基本法の中で、森林資源に関する基本計画や林産物の需要供給に関する長期見通しを立て、林産物の需給や価格の安定を講ずるものとしてきました。しかし、計画と実績は大きく乖離し、長期見通しが破綻したことは、政府が一番熟知されていることだと思います。
 この一部改正案においても、政府は、林産物の供給や利用に関する目標を定めることになっていますが、従来の長期見通しや計画とどこが違うのでしょうか、また、今回の法案による計画の実効性を担保するものは一体何なのでしょうか、農林水産大臣にお伺いをいたします。
 政府は、目標の実効性を確保するために、国産材の利用に関する目標を具体的な数量で示すとしていますが、この数量目標の設定が国民の実際の消費とどうつながっていくのかは明確ではありません。国産材の育成が実際の供給や消費につながらないのであれば、これまでと変わらず、計画倒れに終わります。
 法案では、政府が消費に関する指針も定めることになっています。しかし、国産材の消費につながる具体的な施策は見えてきません。政府は国産材の消費についてどのような施策を講じるのでしょうか、農林水産大臣にお伺いをいたします。
 また、環境を重視して立てられる供給量の目標は、市場原理ではなく、森林育成や需要促進の観点から設定される必要があると私は考えておりますが、いかがでしょうか。もちろん、原生林や広葉樹を伐採するのではなく、健全に育てるべき木を育てるべき場所で育てて、そして健全に切るという発想です。農林水産大臣の御見解を伺います。
 外材への依存構造からどう脱却するかということについても質問をいたします。
 日本の木材の利用は、外材利用が八〇%、国産材の利用が二〇%という中で、国産材は、外材の価格に連動させられる形で価格を引き下げざるを得ないというのが実態です。この実情を改善し、国産材の利用を促進するための有効な施策は考えられないのでしょうか、農林水産大臣にお伺いをいたします。
 国産材の自給率向上にこだわるもう一つの側面は、国際的環境保全の見地からも重要だからです。
 国際的な批判も浴びている、日本企業による熱帯雨林やシベリアの森林の乱伐、それが、環境破壊を引き起こし、一種の南北問題に発展しています。一九九二年の地球サミットでは、森林原則声明が採択されました。この声明は、森林の保全と利用を両立させ、持続可能な森林経営を理念とするものです。
 私は、必要な木材はできる限り国内で生産することを基本とすべきだと考えます。また、できるだけ身近な資源を利用し、循環させることは、エネルギー保全にもつながります。日本の国土の七〇%は森林であり、世界第三位の森林国です。そんな国が、自分の国の木材は採算がとれないから利用しないとか、国外の木材は安いから幾らでも伐採して利用するというのでは、国際的に通用するはずがありません。
 そこで、木材の自給率向上に取り組むべきだと考えますが、農林水産大臣の御見解をお聞かせください。
 冒頭に申し上げました。私は農家の娘です。林業とか農業の大変さは、よくわかります。実家にいたころは、農業なんて絶対にやりたくないというふうに思っていました。そして、なりふり構わず、泥だらけになって働く両親を恥ずかしいと思ったこともありました。しかし、大変な仕事ながらも、生き生きと働く喜びを持って木を育てている家族を、私は今、誇りに思います。(拍手)
 私たちの心を豊かにしてくれる自然環境、その保全の一端を担う林業を営む人々が、また、これから林業に携わっていこうという人たちが、喜びを持って働くことができる、これが私たちの望みではないでしょうか。そんな願いを酌んでの大臣からの御答弁を期待して、私の質問を終わりにいたします。(拍手)
○国務大臣(塩川正十郎君)   お答えいたします。
 先ほどの御質問の中で、森林を破壊するようなダムとか林道の建設への投資をやめて、もっと人材育成に尽くすべきではないかとおっしゃっておいででした。
 人材育成は私たちも大いに賛成でございますが、しかし、ダムの建設や林道の建設というものは、山を健全に守っていくためにはやはり必要なものであると思っております。それは、一つは、山地の災害を防ぐことでもあり、一方においては、林道の整備を通じましてより健やかな、いい森林をつくるためでございます。
 したがって、林道並びにダムにつきましては、その建設について、十分に環境破壊との関係を考慮しながら、必要なものは進めていくという方針をとらざるを得ないのであります。
 なお、人材育成につきましては、私も大いに賛成でございますし、どうぞ、そういうことにおきます積極的な施策を展開するよう協力いたしてまいるつもりであります。
 以上であります。(拍手)
○国務大臣(武部勤君)   最もお若い、新緑にも匹敵する原議員から、さわやかな、心温まる、まことに整理されたすばらしい御質問をいただきまして、大変感激いたしました。(拍手)
 私の答弁は、御質問に順序よくお答えできないかもしれませんが、お許しをいただきたいと思います。
 まず、森林の有する多面的機能に配慮した林業経営の実現のために、森林の果たすべき機能に応じた施業への誘導を図りつつ、効率的、安定的な林業経営を育成、確保する、かような必要を感じております。
 このため、育成すべき担い手の明確化と、これらの者への受委託等による施業や経営の集約化の促進、林道等の整備や機械化による生産コストの低減等を図ってまいらなければならない、かように存じております。
 次に、林業者への支援の財源についてであります。
 効率的、安定的な林業経営を育成、確保するために、今後とも、森林の整備、保全への支援、生産性の向上、木材の需要の開拓等の施策を総合的に講じる必要がございます。これに必要な財源については、施策の重点化、効率化を行いながら、その確保に最大限努力してまいりたいと存じます。
 次に、林野公共事業の見直しについてでございます。
 林野公共事業は、国民の要請にこたえ、森林の有する多面的機能を持続的に発揮させていくためには、極めて重要な事業であると存じます。これまでも、造林、林道の整備、また治山施設の配備等を行い、豊かな森林の育成、整備を進めてきたところでございますが、今後とも、森林整備や担い手の確保・育成対策に資するよう、重点的かつ効率的な事業の推進に努めてまいりたいと存じます。
 次に、林業の担い手確保についてのお尋ねでございます。
 林業就業者を確保、育成していく上で、就業者の処遇の改善が重要であることは言うまでもございません。そのように認識しております。
 このため、生産性の向上等により事業体の収益性を高めることを通じて、安定的な事業量の確保とともに、通年雇用化等、そこで働く就業者の処遇の改善を図ってまいりたいと考えております。
 あわせて、林業の担い手確保のための林業者への所得補償についてのお尋ねがございました。
 担い手の確保については、先ほど申し述べましたような施策を推進していく一方で、森林所有者等が行う、森林施業の計画的かつ一体的な実施に不可欠な森林の現況調査等の活動に対する支援を、今回の森林・林業基本法案に位置づけるとともに、現在、その具体化に向け検討を行っている次第でございます。
 続いて、森林・林業基本計画と従来の計画との相違についてのお尋ねがございました。
 現行の資源基本計画及び林産物の需給に関する長期見通しは、森林整備の基本方向と重要な林産物の長期的な需要及び供給の見通しを示したものであります。
 これに対して、森林・林業基本計画は、施策の基本方針、森林の整備及び保全の指針としての目標と林産物の供給及び利用の目標、政府として講ずべき施策等を総合的に盛り込んだ計画でございまして、森林・林業、木材産業関係者はもとより、広く国民の取り組むべき課題や国の施策の方向を明らかにするものであります。
 また、森林・林業基本計画の実効性をどのように担保するのかについて申し上げます。
 基本計画に掲げる目標を達成するには、施策の着実な推進とともに、森林所有者など関係者一体となった取り組みが求められます。
 このため、基本計画においては、関係者が取り組むべき課題を明らかにし、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策を定めるとともに、これを具体化していく考えであります。おおむね五年ごとに計画を見直し、政策の効果を検証していくことを通じ、その実効性の確保を図ることといたしております。
 次に、国産材の消費拡大をどのように図っていくかというお尋ねがございました。
 木材は、人や環境に優しいすぐれた資材であり、その利用を通じて、我が国林業の活性化、森林の適切な管理に資するものであります。
 このため、木材利用について国民への普及啓発を図るとともに、住宅や公共施設等への地域材利用の促進、またバイオマスエネルギーとしての利用など、木材、とりわけ国産材の需要拡大に取り組んでまいりたいと考えております。
 また、林産物の供給・利用目標についてお尋ねがございました。
 この目標については、望ましい森林施業のあり方や、それに伴い産出される木材の供給量、品質、性能等に係る消費者ニーズを踏まえ、関係者が取り組むべき課題を明らかにし、当面目標とすべき具体的な木材の供給・利用量や木材利用の方向について提示することを想定しております。
 今後、この目標を含めた基本計画に基づき、望ましい森林施業と、人や環境に優しい素材である木材の利用の意義について、国民の理解を得つつ、木材利用の促進を図ってまいりたいと存じます。
 次に、国産材の利用促進について申し上げます。
 国産材の利用を促進するためには、品質、性能の明確な製品を低コストで安定的に供給することが重要であります。
 このため、乾燥材等の供給体制の整備や加工、流通の拠点施設の整備等により木材の安定供給体制をつくり、需要者のニーズに合った国産材の供給を図ることにより、その利用を促進していく考えであります。
 最後に、国際的な環境保全の観点から木材の自給率の向上に取り組むべきとの御指摘がございました。
 全く同感でございます。
 我が国の木材輸入により、輸出国の森林の有する多面的機能が失われることがないよう、我が国として配慮することは大変重要なことと考えております。
 また、国産材の利用の促進が、我が国の森林の有する多面的機能の発揮及びそれを支える林業の健全な発展に極めて重要な役割を果たしていることから、引き続き、国産材の需要の拡大に努めてまいります。
 以上、答弁といたします。(拍手)

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