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第153国会 憲法調査会3号 2001/11/8
○原委員 社会民主党の原陽子です。よろしくお願いします。
 私はきょう、首相公選制について幾つかお聞きをしたいと思います。この首相公選制については、四月の自民党の総裁選挙で小泉さんが唱えたこともあって、私なりに関心を持って意見を考えてまいりました。それと、大学の後輩や友人たちと一緒に幾つか議論も交わしてきました。
 先ほどの御意見の中に、首相公選制には国民の期待感が大きいという意見があったかと思います。首相を公選で選ぶことによって、強いリーダーシップを与えて政策決定のプロセスを変えて、政治が変わるみたいな期待感が非常に大きいという意見があったのですが、果たして本当にそうかなというふうに私は思っております。
 それはなぜかと申しますと、私の後輩や仲間と議論をしていく中で、首相公選制については、どちらかというと、期待というよりは人気投票的な、私たちの言葉で言えば「ノリ」といった感じなんですが、そうした感覚が実は強いのではないかなというふうに思います。例えば、自分で直接小泉さんや田中眞紀子さんを選べるのは楽しそうとか、首相公選制はおもしろそうといったような意見を言う人が若者の中には多くいるというふうに思っております。
 ですから、首相公選制で政治が変わるという期待感というよりは、人気投票的なノリの部分、その気持ちが大きいのではないかなというふうに私は思うのですが、これは若者に限らないかもしれませんが、そうした人気投票的な部分について先生の御意見をお伺いしたいと思います。
○長谷部恭男(東京大学法学部教授)参考人 私は、実は、そういう世論調査をしたこともありませんし、個別の人の意見を聴取したということもありませんので、現実の人々の感じ方についてはお答えする能力を欠いていると思うのですけれども、確かに、直接公選で自分たちも首相の選択に参加したいというときに、そういった人気投票的な感覚もその中に要素としては含まれるという傾向は当然あり得ることではないかなというふうに考えております。
○原委員  次の質問なのですが、長谷部先生の論文を読ませていただきまして、首相公選制をとったからといって首相のリーダーシップが強化されるわけではないというようなことが書かれていたかと思います。私自身も、首相公選制と首相のリーダーシップ強化とは関係がないという先生の御意見は、全くそのとおりだというふうに思っております。
 先ほどからの議論の中にも、リーダーシップ、リーダーシップという言葉が非常に多く出てきておりますが、現在の制度でも、これまで十分に強いリーダーシップをとった首相もいたと思いますし、実際に、現在でも重要法案と言われるものを数日間で通すということは、私は、これは恐ろしいぐらい強いリーダーシップではないのかなというふうに思っているのですが、これからの日本の政治を考える上で、首相のリーダーシップというものは現在よりも強化されるべきなのでしょうか。この点について先生の御意見をお伺いできればと思います。
○長谷部参考人  首相のリーダーシップがこれから強化されるべきなのか、強化されるべきでないのかというのは、一般論として申し上げるのは非常に難しい論点ではないかなというふうに思います。
 というのは、これは、個別の政策上の課題に応じて、強いリーダーシップが期待されるべき問題と、そうではなくて、ここは国家十年なり五十年なりの計であるから、もう少し慎重にいろいろな人々の意見を聞いた上で物事を決めなくてはいけないというところも当然ある話だろうと思います。
 さらに、首相のリーダーシップと言うときにも、恐らく首相個人が何でもかんでもリーダーシップをとるということが想定されているわけではないのであって、企画立案としていろいろな部署から積み上がってきたものが選択肢として首相に提示されたときに、自分はこちらでいく、こちらの案よりはこちらの案でいきたい、そう首相が決断した以上は、それをかなり効果的に審議、決定、そして執行に移していくということが想定されているのだろうと思いますので、それは積み上がっていくプロセスがどういうものなのかということも当然考慮に入れなくてはいけないのかなというふうに考えております。
○原委員  次の質問なんですが、先ほどから、官僚機構の肥大化ということが議論の中に出ていたかと思います。私も、これは確かに大きな問題であるというふうに思っております。私が思うには、この官僚機構の肥大化の最も大きな問題点は、もちろん私も含めてだと思いますが、国会議員の勉強不足や、国会の立法活動さえも官僚に頼ってしまうというあり方が大きな問題点であるというふうに思いますし、私たち国会議員がもっともっと力をつけていく必要があると思います。
 つまり、立法府の機能強化ということが重要になってくると私は思うのですが、この点について先生の御意見をお伺いしたいと思います。
○長谷部参考人  これは、バランスのとり方の問題もあるかなと思います。
 官僚機構にすべてお任せということでは、もちろん現在でもないはずですけれども、かなりの部分を官僚機構に頼って立法活動を進めざるを得ないというのは、これは日本に限らず、先進各国、いろいろな国で見られる話でありまして、情報を収集してくる能力でありますとか、それぞれの役所で研究会なり懇談会なりをつくって各界の意見を集約するシステムですとか、それこそ文案の作成の能力等につきまして、官僚機構は官僚機構なりに非常に貴重なノウハウを蓄積しておりますので、その既存のノウハウを利用しない手はないだろうと思います。まだ何も知らないという人が一からノウハウを蓄積していくよりは、既存のノウハウを使う、そういう道も当然あり得る話ではないかなと思います。
 それから、これは変な言い方になりますけれども、先ほどお話のありました有権者の選択の問題ですけれども、何しろ、主権者は国民、有権者でありますので、そういう人たちが自分たちで立法活動をする国会議員を選びたいと思うのでしたら、有権者は多分そうしていただろうと思うのですね。ただ、先生がおっしゃるとおり、官僚機構にかなり依拠してきた国会議員の先生方が実際には有権者によって選ばれていたというのは、そういった官僚機構にかなり依存するような国会議員の方が実は安心して選挙できるという選択だったのかもしれないわけでございまして、ここのところは、どうしても国会議員が御自分でということになる話でも実はないのかなということを考えております。
 もちろん、余り任せ過ぎますとコントロールが全くきかなくなってしまいますので、少なくともコントロールがきく程度にいろいろ勉強していただくというのは、これは当然必要なことかなというふうに考えております。
○原委員  では、最後に一つ、そもそも何でということでお聞きをしたいと思うんですが、この首相公選制という言葉は、四月の自民党の総裁選で小泉さんが声高におっしゃったから、クローズアップされて国民の関心も高まったというふうに思うのですが、そもそも何であの時点で小泉さんが首相公選制というものを声高に唱えたのか、本当のねらいどころは何だったのかということを、これは先生のお考えあるいは感想などでお聞かせ願えたらなというふうに思います。
○長谷部参考人  これは、私の考えというよりも、小泉首相御自身が、たしかこの憲法調査会の席上で、憲法改正の筋道を示すということがこの首相公選制を導入するねらいの一つであるということをみずから明言しておられることだと思います。
 ただ、そのこと自体は、私自身としては、少なくとも大義名分のレベルでは余り筋が通らないかなというふうに考えております。つまり、憲法改正自体が自己目的化するということはなかなか理解することが難しいところでございまして、改正した結果、何かいいことが起こるから改正を提案するというのが、これが本来の議論の筋道だろうと思うわけでありまして、そういたしますと、そういう改正をして本当にいいことが起こるのか起こらないのかということに議論が向かうわけでありますけれども、先ほど来、私、申し上げておりますとおり、そういういいことが起こる蓋然性はそれほど高くはないということでございます。
○原委員  きょうは本当に貴重な意見をどうもありがとうございました。
 制度が変われば政治が変わるという考えではなくて、私たちは、首相公選制を導入する前にもっともっとやるべきことがあるのではないかということをまた改めて考えさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。終わります。

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