| 第153国会 長良川河口堰などの住民訴訟に関する質問主意書 2001/12/7 |
| ○原陽子 |
今年六月に開かれた三重県議会の定例会で、長良川河口堰の訴訟について、知事に対し、次のような質問があった。
「原告の請求の要旨は、長良川河口堰に係る一般会計から工業用水道事業会計への支出について、知事は支出命令を、出納長は支出をしてはならないと。そこで、知事個人に対して、現在二〇億三〇五八万二六九〇円の賠償請求が出て、提訴されておる。私は、これは金額が非常に大きいし、もしこれ、負けたらどうなるんかなと。負の遺産を引き継がれた北川知事は非常に気の毒だなと、こういうふうに御同情は申し上げます。
そもそも、この事業は、三重県の当時の田川知事も本当に反対だったんですね。担当の部長も反対だった。たびたび建設省にお願いに行ったんだけれども、もう相手にされなかった。私も、この議場からもいろいろ言いましたし、議会の外でも随分やったんですが、最終的には、建設省と水資源開発公団の強行で始まった事業であります。しかし、事業が終わった以上は建設費は払わなくちゃならない。しかし、水が売れませんから一般会計から支出をした。これが今回の訴訟でございます。津地裁あるいは名古屋高裁で現在審理中でございますが、このような住民訴訟について、知事の御心境やら、これからの対応やら、また、御見解を承りたいと、こういうふうに思います。」
右の質問に対する北川知事の答弁は以下の通りであった。
「長良川河口堰の住民訴訟につきましては、一般会計から工業用水道事業会計への支出について、三重県の長としての知事に対しては支出命令、出納長に対しては支出の禁止を求め、さらに、私個人に対し二〇億円余りの県への賠償を求めて訴訟が起こされています。
第一審の津地裁においては、一般会計から工業用水事業会計への支出のみでは県に財産的損害は生じておらず、住民訴訟の適格性を欠くとの理由から訴え却下の判決が出されています。
原告側は、これを不服として名古屋高裁に控訴し、平成一二年七月一三日、名古屋高裁において、会計間の繰り入れは公金の支出に該当し、住民訴訟の対象となり得るとの理由から原判決を取り消し、津地裁に差し戻すとの判決を受けました。
県としては、県内部における会計間の支出のみでは県に損害は発生せず、住民訴訟としての対象適格性を欠くとの理由からこれを不服として最高裁に上告、現在審理中でございます。この最高裁の判決が出るまでには、上告から一年ほどかかると聞いておりますので、今後審理を見守りつつ、的確に対応していきたいと考えております。
また、このような現行の地方自治法の規定に基づく住民訴訟は、実際上地方公共団体の政策の当否を争点とする訴訟であるにもかかわらず、個人としての知事や職員が被告とされる場合があること、また、その場合においても、巨額な賠償額の請求がなされたり、裁判に対する各種負担を個人で担わざるを得ないといったことがあること等の問題点があります。」
これは、公共事業の見直しや特殊法人改革が進む中、地方に任されるべき判断が、官庁や公団に左右され、財務会計上の損失を受けうることを示すケースとして、参考となる事例である。
よって以下質問する。
1 当時の三重県知事や県担当部長が反対していた事業を、当時の建設省と水資源開発公団が強行したという事実を、政府はどう受け止めるか。 |
| ○政府答弁 |
1について
「木曾川水系における水資源開発基本計画」(昭和四十三年総理府告示第三十五号)、「木曾川水系における水資源開発基本計画」(昭和四十八年総理府告示第九号。以下「昭和四十八年計画」という。)及び「木曽川水系における水資源開発基本計画」(平成五年総理府告示第七号。以下「平成五年計画」という。)においては、
供給の目標を達成するため必要な施設を建設する事業の一つとして長良川河口堰建設事業(以下「本件事業」という。)が定められており、内閣総理大臣は、これらの計画の決定並びに昭和四十八年計画及び平成五年計画のその後の変更に当たって、水資源開発促進法(昭和三十六年法律第二百十七号)第四条第一項又は第五項に基づき三重県知事から意見を聴いたが、同県知事は本件事業に反対していない。
また、建設大臣は、「長良川河口堰建設事業に関する事業実施方針」(昭和四十六年十二月二十七日建設省河開発第九十号の五)の策定及びその後の変更に当たって、水資源開発公団法(昭和三十六年法律第二百十八号)第十九条第二項に基づき三重県知事から意見を聴いたが、同県知事は本件事業に反対していない。
さらに、水資源開発公団は、「長良川河口堰建設事業に関する事業実施計画」の作成及びその後の変更に当たって、水資源開発公団法第二十条第一項に基づく三重県知事との協議を調えたほか、平成七年の当該事業実施計画の変更に当たっては、長良川河口堰を利用して流水を水道及び工業用水道の用に供しようとする者として三重県企業庁長が特定されていたことから、同条第二項に基づき同県企業庁長から意見を聴くとともに本件事業に要する費用の負担について同意を求めたが、同県企業庁長は本件事業に反対しておらず、また、当該費用の負担について同意している。
このように、三重県知事及び同県企業庁長は本件事業に反対しておらず、御指摘のような事実はない。 |
○原陽子
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2 政策決定者である知事や担当部長が、三重県にとって何が賢明な選択であるかを判断したにもかかわらず、建設省や水資源開発公団の主張に従い、事業を推進した結果、水が売れず、一般会計から支出をすることになった。その責任は誰にあると政府は考えるか。
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| ○政府答弁 |
2について
御質問の趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「水が売れず、一般会計から支出をすることになった」ことは、三重県及び同県企業庁において対応すべき事柄であると考える。 |
| ○原陽子 |
3 三重県の北勢地域十市町(桑名市・木曽岬町・長島町・川越町・朝日町・楠町・四日市市・鈴鹿市・菰野町・亀山市)で構成される北勢地域広域水道事業促進協議会受水部会は、長良川河口堰からの利水の先送りについての検討を行い、今年七月六日に、利水開始時期の延期を正式に決定した。県議会の議事録に残る企業庁の説明によれば、先送りの理由は、水需要の伸びが計画より鈍化していることだという。これにより、「建設中の利息が生じますが、そのための事業費の増加も考えられます」というのが三重県企業庁の答弁である。当時、建設省および水資源開発公団は、三重県下の多数の自治体が受けるこのような影響を予測していたか。予測していたのだとしたら、水資源開発事業を推進したのは何故か。予測不能だったとしたら、なぜ、当時の知事や担当部長の判断に反して事業を推進したのか。地方公共団体および住民による自治を進める上で、重要な点であるため、明確かつ真摯な答弁をされたい。 |
| ○政府答弁 |
3について
御指摘の答弁は、北中勢水道用水供給事業の一部である北勢系第二次拡張事業に関するものであると承知しているが、その事業主体は三重県企業庁であるから、当該事業の工期の延伸による事業費の増加について、国土交通省(旧建設省)及び水資源開発公団はその予測を行う立場にない。
なお、1についてで述べたとおり、三重県知事及び同県企業庁長が本件事業に反対したという事実はない。 |
| ○原陽子 |
4 北川知事は、「このような現行の地方自治法の規定に基づく住民訴訟は、実際上地方公共団体の政策の当否を争点とする訴訟である」としているが、住民訴訟が政策の当否を争点とする訴訟であるという解釈を、政府もとっているのか。 |
| ○政府答弁 |
4について
現行の住民訴訟制度は、地方公共団体の執行機関又は職員の財務会計上の違法な行為等を是正又は防止することを目的とするものであると解している。
なお、地方公共団体に代位して当該職員に対して損害賠償等の請求を行う住民訴訟においては、住民側が、当該職員の個人としての責任を追及する形を採りながら、実際には財務会計上の行為等の前提となっている地方公共団体の政策判断の当否を争っている場合が多く、このような実情等にかんがみ、現在、住民訴訟制度の見直し等を内容とする地方自治法等の一部を改正する法律案を国会に提出しているところである。 |
| ○原陽子 |
5 過去三年間、現時点までに、政策の当否を含めた争点で起きた住民訴訟で住民勝訴の判決を受けたケースはあるか。司法における判決は、立法において重要な意味を持つので、調査の上、明確に答弁されたい。
右質問する。 |
| ○政府答弁 |
5について
住民訴訟において住民側が勝訴した判決のすべてを把握しているわけではないが、文献等によれば、過去三年間においては、次のような事例があると承知している。
広島高等裁判所判決(平成十三年五月二十九日)は、平成六年当時の下関市長(以下「前下関市長」という。)がいわゆる第三セクターに補助金を支出したことについて、当該補助金の支出の一部は公益性が認められず、前下関市長の行為は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十二条の二に違反するとの理由で、前下関市長に対し、下関市に損害賠償金を支払うよう命じている。なお、当該判決について
は、前下関市長が上告中及び上告受理申立て中である。 |